心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
「つまり、あれだけ派手に人前で、婚約破棄をした訳だからさ。僕らだって貴族院への婚約破棄の手続きは、言い出した側のディレイニー侯爵家がしたんだろうと思い込んでいたし、父さんもディレイニー侯爵に城で偶然会った時に念の為に問い合せたけど、そうしたと先方から口頭で確認したと言っているんだ」

「……そうよね。そうだと思うわ」

 何せあの時、信じられない事態に、ドラジェ伯爵家は大混乱だった。

 婚約破棄をすると言い立てたのはあちらだし、手続き自体は通常なら向こうがすると思うし、お父様もディレイニー侯爵家に確認したのなら、そう思うのも無理はないわ。

「けど、それはあの馬鹿男……ショーンが、自分は騎士になって大手柄を立てて、馬鹿なことをしたけど生まれ変わったと社交界には認めてもらうし、傷付けた姉さんには土下座して謝るからって泣いて言い張るから、ディレイニー侯爵家は二人の婚約自体は破棄したことにせず、そのままにしてたって言うんだよ」

 アメデオが心底不本意だと言わんばかりの苦い表情で吐き捨てたので、あまりに思いもよらない事態になっていたことを知り、私はくらりとして後ろへ倒れそうになった。


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