心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~

23 改心

「ショーン……良く私の前に、顔が出せたわね。自分が私に何をしたか、覚えているの?」

 いきなり現れた男を見て、私は自分の言葉の単語ひとつひとつを、噛み締めるようにして言った。

 確かに私は以前、目の前に居るこの男、ショーンのことが好きだった。

 それなのに、公衆の面前でひどい振られ方をして、誤魔化したくて感情を裏返し、好きではない傷ついてもいない大嫌いだったと、何度も何度も数え切れないくらいに自分に言い聞かせてきた。

 あの頃は、好きだったはず……そう、今は確実に異性として好きではないけど。

 ショーンは黒の巻き髪に、意志の強そうな同色の瞳。少しだけ生意気そうな顔をした青年だ。

 背は高く以前の体型はひょろりとしていたけれど、騎士になったという話の通り、今は鍛えられた身体付きになり、貴族らしい服を纏っていた。

「レニエラ。悪かった。あの時のことは、俺は本当に後悔しているんだ」

 意気揚々と私へ婚約破棄を告げたあの時の姿なんて、今では想像もできないくらいにしおらしく反省の弁を述べたショーンに、まるで予想外だった反応をされた私は、あらと首を傾げた。

 ……どうしたのかしら。やけに大人しいわ。ここで私の言葉の十倍くらいの分量で、言い返されると思っていたのに。

 一年間に王都から離れて辺境で騎士として生活をしていて、何か思うところでもあったのかしらね。

 今思うとショーンは、周囲からとても甘やかされていたわ。両親からも婚約者の私からも。

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