心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
「あんなことがあって……私なんかと結婚することになり、お気の毒です。けど、以前に言った通り、好きでもない女と一生添い遂げる必要など、どこにもありません。私は弁(わきま)えているから」

 愛し合っていたという元婚約者が駆け落ちしたことを暗に示せば、やはり彼は表情を暗くした。

「……待ってください。ひとつお聞きしたいんですが、レニエラにとっては、結婚相手としての僕は不満ですか」

 何か不満を感じているとしたら、そちらなのではないかしら。だって、ジョサイアの整った顔には、いかにも気に入らないと言わんばかりに、不満そうな表情を浮かんでいた。

 そこで、私はジョサイアに対する言い方を間違えたかもしれないことに気がついた。

 ああ……もしかしたら、私から契約結婚を言い出したのは、ジョサイア本人に不満があるからと、彼は勘違いしているのかもしれない。

 そんな訳なんて、あるはずがないのに。

「いいえ! ジョサイアは女性から見た時の結婚相手としては、この上ない程に特上ですわ。だからこそ、思うのです。貴方の望むような、素敵な女性と幸せになってほしいと」

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