心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
モーベット侯爵家は、王家に近い。ということは、車止めのすぐ近くに馬車が停められていた。
特に呼びつける訳でもなく、ジョサイアは馬車へとすたすたと歩き、私を座席へと降ろした。
「……痛むでしょう」
流れるように私の前に跪き、ジョサイアは私の靴を脱がせようとしていた。
何故かというと、私本人はというと重ねられてふわふわのパニエが邪魔して、靴を上手く脱げない。通常こういう場合、邸に帰るまで靴は履いたままなので、足首にもリボンが金具で留められていた。
「……ごめんなさい。ジョサイア。貴方にこんなことさせてしまうなんて」
侯爵にこんな下男のような体勢をさせてしまて、踵が痛いは痛いけど申し訳ない気持ちが強い。
ジョサイアは恭しく靴を脱がせると、そうすることが当たり前のように、私の足の甲にそっとキスをした。
……どうして、彼はそんなことをしたんだろうと思った。
私は彼にとっては仕方なく結婚した、愛されない妻なのに。けど、聞けなかった。なんだか、怖かったから。
私は何も、見ていない。ふんわりしたパニエは視界に拡がり邪魔をして、私の前に跪いた彼が何をしたかなんて見えなかった。
それをした理由を、もし今、彼に聞いてしまえば、動かないはずの私たちの関係が、今にも動いてしまいそうな気がしたから。
「……帰りましょうか」
「はい」
隣に腰掛けたジョサイアも、帰りの馬車の中では黙ったままだった。
特に呼びつける訳でもなく、ジョサイアは馬車へとすたすたと歩き、私を座席へと降ろした。
「……痛むでしょう」
流れるように私の前に跪き、ジョサイアは私の靴を脱がせようとしていた。
何故かというと、私本人はというと重ねられてふわふわのパニエが邪魔して、靴を上手く脱げない。通常こういう場合、邸に帰るまで靴は履いたままなので、足首にもリボンが金具で留められていた。
「……ごめんなさい。ジョサイア。貴方にこんなことさせてしまうなんて」
侯爵にこんな下男のような体勢をさせてしまて、踵が痛いは痛いけど申し訳ない気持ちが強い。
ジョサイアは恭しく靴を脱がせると、そうすることが当たり前のように、私の足の甲にそっとキスをした。
……どうして、彼はそんなことをしたんだろうと思った。
私は彼にとっては仕方なく結婚した、愛されない妻なのに。けど、聞けなかった。なんだか、怖かったから。
私は何も、見ていない。ふんわりしたパニエは視界に拡がり邪魔をして、私の前に跪いた彼が何をしたかなんて見えなかった。
それをした理由を、もし今、彼に聞いてしまえば、動かないはずの私たちの関係が、今にも動いてしまいそうな気がしたから。
「……帰りましょうか」
「はい」
隣に腰掛けたジョサイアも、帰りの馬車の中では黙ったままだった。