心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~

13 離宮

 夜会の折りに約束した通りに、アルベルト陛下は私たちに温泉があるという離宮を貸してくれた。

 週末に行くという日程は、その時から決まっていたものの、馬車に乗って出発するついさっきまで、急ぎの仕事を片付けていたらしい真面目なジョサイアは、なんとも疲労を隠せない様子だ。

 陛下は夜会時ではああ言ってくれたものの、彼は提出する書類をなんとか間に合わせて来たのかもしれない。

 離宮に向かう馬車の中でジョサイアの隣に座る私は、反対にとても体調も良く、今まで噂話では聞いたことがあるけれど、産まれて初めて行くことになった温泉に胸を高鳴らせていた。

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