契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
男という生き物は、多く子孫を残そうという本能が備わっていると聞いたことがある。
それは本当なんだなと、私は二度、自ら身をもって体験している。
母を捨て、他の女性のために家を出て行った父親。
結婚して家族ができたって、簡単にそのすべてを捨てて他所の女性を選んだ父に、私は嫌悪感と不信感しかない。
父親のせいで男性不信になった私が初めてお付き合いした人は、私を大切にしてくれる優しい人だった。
世の中、父のような男性ばかりではない。
彼のおかげで、男性を信じられない気持ちは少しずつ癒え始めていた。……はずだった。
でも、それはやっぱり幻想でしかなかったのだ。
付き合って一カ月、二カ月と順調だった彼とのお付き合いも、三カ月目に入ると徐々に連絡も頻度が減り、デートの約束も向こうの都合で延期を繰り返すようになった。
連絡が減ったことも、会う都合がつきにくいのも、きっと忙しいから。
そう思っていた矢先、彼が私との約束をキャンセルして他の女性と一緒にいるところを目撃してしまった。
信じられなかったし、信じたくもなかった。
だけど、それは私に突き付けられた紛れもない事実だった。
『浮気されるってことは、お前に魅力がないってことだろ。俺のせいじゃない』
あの時言われた言葉は、今でも呪縛のように私の中に残っている。
同時に確信もした。
やっぱり、男というものはみんな同じ。信じることなんてできない、と……。
「とにかく、私は無理。行かないよ。これ、無駄にしたら譲ってくれた方に申し訳ないし、お姉ちゃん誰か友達でも誘って行きなよ」
「はいはい、わかった。今はそう思ってるかもしれないけど、気が変わるかもしれないしね。とりあえず、なくさないように持っておいて」
姉は話をまとめ、「食べよう」と箸を手にする。
テーブルの端に置かれた招待状にちらりと視線を送り、食事にとりかかった。