この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「堂々と規則を破るような連中が、タマに注意されたくらいで行動を改めるとは思えんが?」
「……おっしゃる通りです」

 強面でもマッチョでもない女──しかも、極度の人見知りに吃りながら注意されて反省するような客なら、そもそも最初からやらかさないのだ。

「逆ギレして怒鳴られて、さらには店長にも役立たずと詰られて……」

 功利主義の店長、クレーマーを押し付けてくる先輩、見て見ぬふりをする同僚──人見知りが災いして人間関係をうまく築けていなかった私には、味方をしてくれる人は誰もいなかった。
 自分はこの職場に向いていないと気づくのに時間はかからなかった。
 何度辞めようと思ったかも知れない。
 けれど、マンチカンのミケをはじめとする馴染みの猫達とは離れ難く、結局二年勤めてしまった。

「タマコ殿、たいへんでしたね……」

 私の話を聞いた准将は眉を八の字にし、他の将官達も揃って同情的な眼差しになった。
 みゃーおっ、と准将の頭頂部に陣取ったネコが鳴く。

『まったく! 珠子は世渡りがヘタクソすぎなんじゃい!』

 そんな中、いつのまにか俯いていた私の頭に、隣からミケの手が伸びてきた。
 猫カフェで歯を食いしばって働いていた時とは対照的な色合いになった髪を、猫を可愛がるみたいにわしゃわしゃと撫でる。
 そうして、彼はきっぱりと言った。

「そんな生き辛い思いをさせた世界になど、タマは絶対に返さん」

 私の強い味方は、どうやら異世界にいたようだ。
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