この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

4話 不出来な娘と毒親ネコ

『珠子を返さんも何も──そもそも、元の世界になんぞ戻れんがなっ!』

 身も蓋もないことを言うダミ声の発信源は、私の腕の中にいる真っ白いモフモフ──ブリティッシュロングヘアっぽいネコだ。
 軍の会議室を出る際には大人しく私の腕の中に収まったものの、まだプンプンしている。

『まったく! 珠子のせいで、テンションだだ下がりじゃわい! 我は、今日はもう一歩も歩かんぞ!』
「はいはい、私が運んであげるから、機嫌直して」

 五匹の子ネコ達はミーミーと鳴きながら、私の肩や頭の上を行ったり来たりして戯れ合っている。
 将官達からたっぷりと負の感情を摂取したおかげで、元気があり余っているのだろう。
 現在、私とネコ達は王宮へと続く小径を進んでいるところだ。
 ベルンハルト王国の城は、正門を入ってすぐ左手に軍の施設、右手に聖堂、それらの背後に王宮、と三つの大きな建物で構成されている。
 それぞれの建物の間を埋めるように造られた庭園は見事なものだ。
 所々に東屋やベンチが設置され、専ら上流階級の人々が憩いの場として利用している。
 今もどこかで令嬢達がお茶会でも開いているのだろうか。きゃらきゃらと楽しそうな声が聞こえてくる。
 私はご機嫌斜めなモフモフを抱え直し、足を進めながら問うた。
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