この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「侯爵家を筆頭に、武官を輩出していない家のお嬢さんばかりですね。日が高いうちからおしゃべりに興じるとは、気楽なものです」
「戦場を見てきた者と、安全な王都に引きこもっていた者の間には温度差がある──これは、いたしかたないことですわ」

 メルさんは呆れたように、ロメリアさんは冷ややかに言う。
 彼女達の間に挟まれた私は、小さくため息を吐いた。

「あの人達が今ああして無為に時間を過ごせるのは、ミケや将官の皆さん、それにロメリアさんやメルさんのように命を賭して戦った人達のおかげなのに……」

 ベルンハルト王国とラーガスト王国の戦争に関し、私は完全なる部外者だ。
 しかし、この戦争が後者の一方的な宣戦布告により始まり、ベルンハルト王国は自国の領土と民を守るために戦ったのだということを知っている。

「戦争に勝ってからも、ミケ達は会議室に場所を移して戦い続けています。それを、あの人達はご存知ないのでしょうか。ミケ達の苦労を蔑ろにされているみたいで……悔しくなってしまいます」

 そう呟いて唇を噛む私の頭を、ロメリアさんはネコを抱えていない方の手で優しく撫でた。

「有象無象に心を煩わせる時間など無駄ですわ。もっと、建設的に生きなさい」
「建設的……あっ、そうだ! 実は今夜、王妃様と女子会をするんですが、ロメリアさんとメルさんもご一緒にいかがですか? 好きな人を誘っていいと言っていただいているんです!」
「あら……女子会とは、なんですの?」
「女子が飲み食いしながら、建設的な話をする私的な集まりのことですよ!」

 王妃様とは、実はもう何度も女子会をしているが、ロメリアさんやメルさんを誘うのは初めてのことだ。
 ロメリアさんが乗ってきてくれたのが嬉しくて、私は令嬢達のことなどどうでもよくなった。
 子ネコ達に頬擦りをしつつ、メルさんも弾んだ声で言う。

「それでしたら、手土産が必要でございますね。ロメリア様とタマコ嬢が王宮にお入りになりましたら、私は一度屋敷に戻ってワインでも……」
「あ、大丈夫です、メルさん! ワインは、侍従長さんからなんかいい感じのやつを掻っ払ってきてくれるはずです! ミケが!」
「おタマ……あなた、殿下使いが荒いですわね。なんかいい感じのやつ、とはなんですの」

 私達が和気藹々と言い交わす中、ロメリアさんの小脇に抱えられたネコがニンマリと笑った。

『いいぞいいぞ、珠子! その調子で、そやつらの好感をキープしとけよ! 我らがこの世界を制すためにな!』

 そんな毒親の言葉なんて、私は聞こえないふりをした。
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