この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「いやはや、おタマちゃんが何事もなく回復して本当によかったな。素っ裸で現れた女の子が、倅に代わって凶刃を受けた、なんて報告を受けた時にはどうなることかと思ったがね」
「まあまあ、陛下……余計なことをおっしゃいましたわ」

 私は、水の入ったグラスを取り落としそうになった。
 ミケが受け止めてくれたおかげで床を濡らさずに済んだが、そのお礼を言う余裕もない。

「こ、ここ、国王様……? 今なんて、おっしゃいました……?」
「おタマちゃんが元気になってくれて、おじさんうれしーっ、と」
「じゃなくて! あの……は、はだっ、はだかって……私が、ですか……?」
「うん? そう聞いているが?」

 ガツンと頭を殴りつけられたような衝撃に、ほろ酔い気分が一気に吹き飛ぶ。
 王妃様の膝の上で顔を洗っていたネコが、にちゃあっと笑った。

『なーにを今更驚いておるか! 世界と世界の狭間で再生されたのは、我と珠子の細胞だけに決まっとろうが!』
「そんなっ……」

 そんなこと、知らなかった。
 服がログアウトしていたなんて──知りたくなかった!

「はっ……はずかしいいいいっ!!」
「タ、タマ、気にすることはないぞ? ほら、あの時は天幕の中もひどく混乱していたからな。誰も注視してはいな……」
「いいえ! わたくしはがっつり拝見いたしましたが? なんでしたら、手当のついでに全身隈なく検分して差し上げましたわ!」
「あああっ……ロメリア様、いけません! タマコ嬢、大丈夫ですよ? 私は、少ししか見ておりませんからね?」

 わっと叫んで両手で顔を覆う私を、ミケが慌てて宥めようとする。
 対するロメリアさんは胸を張って追い討ちをかけ、メルさんは必死にその口を塞ごうとした。
 恥ずかしさがピークに達した私は、ミケの手からグラスを奪い……

「珠子、飲みまぁあああすっ!!」
「あっ、こらっ……!」

 生まれて初めて、やけ酒を呷った。
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