この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 王宮の最も奥まった場所にあるこの一角は、王家のプライベートスペースとなっていた。
 飲み会が開かれた王妃様の居室から私達の部屋までは、廊下で繋がっている。
 使用人の姿はまばらで、恐れ多くも王子殿下におぶってもらっている私を見咎める者もいない。
 
「でも、おんぶでよかった……お姫様抱っこだったら、さすがに恥ずか死んでました」
「死ぬなんて言葉を容易に使うな。……まあ、そのお姫様抱っことやらをタマにしたことは、あるんだがな」
「えっ!? い、いつ……?」
「……タマが、私の膝の上で刺された後だ」
「それって、私が素っ裸だった時──せっかく、忘れかけてたのに! なんで蒸し返したんですかっ!?」
「まことにすまんかった」

 ネコ達と同様に、私はベルンハルト王国どころかこの世界の人間でさえない。
 にもかかわらず、王子殿下の命の恩人という触れ込みにより、その私室の隣に部屋を与えられるという破格の待遇を受けていた。
 何より、ミケが私に対してとにかく甲斐甲斐しいのだ。

「ともあれ、タマが安全に飲めるのはワイン二杯までだということが判明したな。自衛のためにも、己の限界を把握しておくのは大事なことだぞ」

 そう言うミケ自身は随分と杯を重ねていたと思うが、酔っている気配は少しもない。ただし……

(昼間に会議室でお茶した時よりも、疲れてるみたい。体も──心も)
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