この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
『おれ、〝チート〟ににゃった。前のヤツの分まで、ミットーさんと一緒にいるにゃ!』
『許さーんっ!!』
『うるせーにゃ! 母ちゃんがダメっつっても、ミットーさんちの子ににゃるしっ!』
『おおお、おまえええっ……生後一日未満で、もう反抗期かいっ……!!』

 などと怒鳴り合いながら、〝ブリティッシュロングヘアっぽいの〟対〝ベンガルっぽいの〟で、猫パンチの応酬が始まった。
 通り掛かった人々は、とたんにほっこりとした表情になる。
 ネコ語を解さない彼らには、ただモフモフが戯れ合っているだけのように見えるのだろう。仲良しねぇ、なんて見当違いの感想まで聞こえてくる。
 先に生まれていた五匹の子ネコも、一夜にして強烈な個性を手に入れた末っ子に興味津々だ。
 ミーミー、ミーミー、賑やかな彼らを抱えつつ、私はヒートアップする親子喧嘩におろおろする。

「ちょ、ちょっと、落ち着いてよ。ケガするってば……」
『もらったにゃー!』
『へぶっ……!!』

 そうこうしているうちに、末っ子チートの右フックが顔面に入り、ネコが後ろにひっくり返った。ベンガルっぽいだけあって、チートは手足が長くて筋肉質なのだ。
 おおっ、と観客からどよめきの声が上がる。
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