この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
第二章 ネコは増殖する

8話 ラーガストの末王子

『おれ、ミットーさんちの子ににゃる!』
『ならーんっ!!』

 ネコファミリーに、突如激震が走った。
 この前日、私の手によりネコから引き剥がされたゴルフボール大の毛玉。
 うっかりミットー公爵の左袖に潜り込んだままお持ち帰りされてしまったそれは、一夜明け、劇的な変身を遂げて私達の前に現れたのである。

『おれ、ミットーさんが寝てる間にいーっぱい食った。食えるだけ食った。そしたら──こうにゃった!』

 にゃんっ! と元気いっぱいに鳴いたのは、小麦色の毛並みにヒョウのような黒い斑点のある、ベンガルを彷彿とさせる子だ。
 この世界に生息する大型の猫っぽい動物レーヴェにもそっくりらしい。
 サイズ的には、ベンガルとしてなら成獣だが、レーヴェならば幼獣といったところか。

『かつてレーヴェとやらの飼育に失敗した後悔が、あの公爵の中で幅を利かせとったんじゃろうよ。一晩中あやつに張り付いて負の感情を食ら尽くした、我の子の姿形に影響が及ぶほどにな』

 ネコはしっぽでバンバン床を叩きながら、不機嫌そうに言う。
 決定打となったのは、今朝になって毛玉の変貌に気づいたミットー公爵が、手放したレーヴェの名を与えたことだった。
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