この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

9話 敵国の王子同士

 ミケの髪と軍服には、水滴が付いていた。
 やはり雨が降り始めたのかと思いつつ、私はそれをハンカチで拭う。
 窓辺から移動して膝の上に乗ってきたネコは、また前足で顔を洗っている。
 ネコがトラちゃんに好意的ではないのは、彼が私を刺した張本人だからだった。
 ミケの剣幕に驚いた子ネコ達はネコのお腹の下に潜り込み、じっと観察している。
 ミケと……彼と対峙する、トラちゃんを。

(い、胃が痛い……)

 ミケが侍女も衛兵も下がらせてしまったため、部屋の中の人間は彼とトラちゃんと私の三人だけになっていた。
 元敵国同士の王子達が、テーブルを挟んでそれぞれソファに腰を下ろす。
 問答無用でミケの隣に座らされた私は、緊迫の状況に戦々恐々とした。

(この世界に来る前の私だったら、きっと胃に穴が空いてた……)

 しかしながら、今の私は一味違う。
 異世界転移中にネコの細胞が混ざったせいか、少々図太くなったのだ。
 私は、壁際に置かれた時計を目にして果敢にも挙手をする。
 時刻は、正午を過ぎていた。
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