この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「あのー、ミケさん。ちょっと、いいですか?」
「……なんだ」
「提案なんですけど……せっかくですので、一緒にお昼ご飯食べません?」
「……タマは腹が減っているのか?」

 ミケは、そんな気分になれないと言いたげな顔をする。
 それでも、私の話を一蹴しようとはしなかったため、遠慮なく続けた。

「私とトラちゃんは時間の融通がききますが、ミケは難しいでしょう? お昼を食べ損ねたミケが、お腹を空かせたまま午後の仕事をする光景を想像すると……」

 ここで、私の脳内にて、人間のミケがマンチカンのミケに置き換わる。
 脳内の彼はお腹をグーグー鳴らしながら、短い前足で一生懸命書類にサインをし続けていた。その切ない表情に、たちまち打ちのめされた心地になる。
 私は、隣に座るミケの金髪をなでなでしながら叫んだ。

「か、かわいそうすぎる──ひどい! そんなの、鬼畜の所業ですよ!」
『やっかましいぞ、珠子ぉ! 情緒の忙しいやつじゃな、まったくっ!』
「いったいどんな想像をしたんだ……」

 ネコには呆れられてしまったが、ミケは毒気を抜かれたような顔になった。
 トラちゃんは、じっと私を見つめている。
 ともあれ、私の意見も一理あると思ったのか、ミケは小さなため息とともに言った。

「そうだな……食うか」
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