この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
「そういえば、小さなレーヴェみたいな子がミットー公爵閣下のところに行きませんでしたか? チートって名前がつけられた」
「来た来た。公爵にベッタリで、他の将官達が羨ましがって大変だったぞ。公爵も公爵で、仕事を邪魔されまくっているのに幸せそうでな」
「全力でネコハラされてますねー。でも、それだと永遠に仕事ができませんので、公爵閣下にはあの子を軍服の胸元にでも放り込んでおくことをお勧めします。そこで落ち着いたら、しばらくは大人しくしていると思うので」
「なるほど。伝えておこう」

 ミケは頷きながらも、じっとこちらを見つめてくる。
 もしかして、彼もミットー公爵が羨ましかったのかと思い、私は立ち止まってネコを差し出してみた。

「ミケもだっこしてみますか? いい匂いがして癒やされますよ」
「そうだな……癒やされようか」

 同じく立ち止まったミケも、すぐに頷いて両手を伸ばしてくる。
 ところが彼が抱き上げたのは、ネコではなかった。

「いや、ミケさん!? 私じゃなくて、ネコをっ……!!」
「私は、ネコよりもタマと触れ合っている方が癒やされる」
「なら、いいですけど……いいのかな? これ、ミケの体面的に大丈夫ですか?」
「問題ない」

 ミケはそう言い切って、抱え上げた私の肩に額を押し付けてくるが、問題ないようには思えない。
 実際、私達の近くに居合わせた人々はざわりとした。
 私という存在はこの半年で随分と周知されたが、昨日の令嬢達みたいに快く思っていない者もいるだろう。
 それに、元人見知りとしては、好意的であろうとなかろうと自分に視線が集まるのは好ましくない。
 居心地の悪さに耐えかね、私もミケの肩に顔を伏せてしまおうかと思った時だった。
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