この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 湯煎が終わったオイルを濾して保存容器に移す。
 ラベンダーの花はガーゼの上に残り、その成分が抽出された透明なオイルがゆっくりとガラス瓶の底に溜まっていった。
 それがまるで、元の世界ですっかり空になっていた自己肯定感が、国王様と王妃様の言葉が注がれることによって、ゆっくりと満たされていくみたいに錯覚する。
 うれしくて、顔が綻びそうになった。
 けれど、ミケの兄の死が根底にあるとすれば、ここで笑うのはあまりに不謹慎だろう。
 私は、頬の内側を噛んで弾む心を押し殺す。
 そんな私と、国王夫妻を見比べたネコは、何やら胡乱げに呟いた。


『聞こえのいい言葉ばかりを言うヤツには気をつけろよ、珠子』


 国王様が、ミケのトラウマをこのタイミングで私に話した理由は、後日判明することになる。
< 86 / 282 >

この作品をシェア

pagetop