この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

12話 モフモフ大運動会と茶番

「トライアン王子を総督府まで護送し、ラーガスト革命軍に引き渡してくるように」

 時刻は、午後三時を回ったところ。
 ちょうど私がお茶を淹れにきている時間に、侍従長を伴い軍の会議室を訪れた国王様は、腰痛持ちの気のいいおじさんではなく、ベルンハルト王国君主としてそう告げた。
 敗戦とともに王政が崩壊したラーガスト王国では、王族を断罪したラーガスト革命軍なる者達が民衆の代表となっている。
 トラちゃんを彼らに引き渡すなんて話は、私にとっては寝耳に水。戦後処理の先頭に立っているミケでさえも把握していなかったことのようだ。
 私達がトラちゃんと三人で昼食を食べてから、三日が経っていた。
 いつもはミケが座っている椅子に国王様が腰を下ろし、侍従長がその脇に控える。
 ミケもミットー公爵もその他の将官達も、もちろん私も立ったまま話を聞いていた。
 ネコと子ネコ達、そしてミットー公爵預かりとなったベンガルっぽい見た目の末っ子チートは長テーブルの上で好き勝手寛いでいたが、国王様は彼らには構わず、ミケに視線を定めて続ける。

「ラーガスト革命軍の指揮官は、トライアン王子の母方の伯父らしい。王族がことごとく処刑される中、トライアン王子の母親が見逃されたのもそのおかげだな」
「では、革命軍に引き渡したとしても、トライアンの安全は保証されるということですね?」
「いかにも。革命軍は彼を、象徴的国王として祭り上げる算段らしい」
「不遇の末王子がたった一人生き残り、ついには国王になりますか……」
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