この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
 長年の悪政により国民の心が離れ始めていた上、ベルンハルト王国に対して一方的な戦争をしかけたこと、そしてそれに敗北したことで、ラーガスト王家の権威は完全に失墜する。
 中央政権からの搾取に苦しめられていた地方領主を中心として革命軍が結成されれば、ベルンハルト王国は密かにこれを支援し、結果ラーガスト王国の崩壊は内部からも始まった。

「最終決戦を前にして、王族は国民を見捨てて第三国へ逃れようとしたらしいな」
「ええ、最年少のトライアンを一人敵陣に送っておきながら。まったく……薄情にもほどがありますね」

 国王様とミケが苦虫を噛み潰したような顔をしてそう言い交わす。
 結局、逃亡を図った王族はことごとく革命軍に捕らえられ、断頭台に送られたらしい。

「最後に散ったのは、誰だったか?」
「マルカリヤン・ラーガスト王太子です。当時、父王から軍の全権を任されていました。トライアンにとっては、腹違いの長兄に当たります」

 ミケの答えに頷いた国王様は、長テーブルに両肘を突いて話を続ける。

「ラーガストは元々敬虔なお国柄でな。王家は神の子孫であるとされ、国王に至っては生き神として崇められていた。戦争が終わって生活が落ち着き始めたために、彼らは再び信仰を求めるようになったのだろう」
「革命軍は、その信仰心を復興の原動力にしようと考えているのですね。王家の血を引く唯一の生き残りであるトライアンを利用して」

 ミケは、ヤングケアラーだったトラちゃんを捕虜としてベルンハルトに置くことで療養させようと考えていたが、どうやらそうも言っていられない状況のようだ。
 ミットー公爵をはじめとする将官達はもちろんミケも、トラちゃんをラーガスト革命軍に引き渡すという決定に異議を唱えようとはしなかった。
 ところがこの後、国王様がさらに続けた言葉で、ミケはたちまち剣呑な気配を纏う。
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