店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
彼女には兄が一人いる。
母を知らず、王立学校の中等科に上がる前に父が亡くなって以降は、六歳離れた兄オリバーがイヴの親代わりだった。
彼こそが、『カフェ・フォルコ』の店長である。
そんなオリバーも、イヴが高等科を卒業した一年前、店を彼女に委ねて新たなコーヒー豆を求める旅に出た。
時折ふらりと戻ったかと思ったら、またすぐに出かけて行ってしまうのだが……
「オリバーが不在の間は、私があいつの代わりをする。なんら問題はない──イヴ、コーヒーうまいよ」
「恐れ入ります」
この通り、ウィリアムが兄役を買ってくれているため、イヴは生活面での不自由も、寂しい思いもせずに毎日を過ごせている。
そうこうしているうちに、時刻は間もなく十七時になろうとしていた。
「やっば、もうこんな時間! じーちゃん、帰るよ。もう飲んだ? 飲んだね? はいカップ、お返しします! ごちそうさま!」
慌ててカフェモカを飲み干したジュニアが、空になった二つのカップをカウンターに返す。
そして、性懲りも無くイヴに絡もうとしていたマンチカン伯爵の首根っこを掴んで帰宅を促した。
んにゃあ……と鳴いて孫に引っ張られていく相手を、イヴは慌てて呼び止める。
母を知らず、王立学校の中等科に上がる前に父が亡くなって以降は、六歳離れた兄オリバーがイヴの親代わりだった。
彼こそが、『カフェ・フォルコ』の店長である。
そんなオリバーも、イヴが高等科を卒業した一年前、店を彼女に委ねて新たなコーヒー豆を求める旅に出た。
時折ふらりと戻ったかと思ったら、またすぐに出かけて行ってしまうのだが……
「オリバーが不在の間は、私があいつの代わりをする。なんら問題はない──イヴ、コーヒーうまいよ」
「恐れ入ります」
この通り、ウィリアムが兄役を買ってくれているため、イヴは生活面での不自由も、寂しい思いもせずに毎日を過ごせている。
そうこうしているうちに、時刻は間もなく十七時になろうとしていた。
「やっば、もうこんな時間! じーちゃん、帰るよ。もう飲んだ? 飲んだね? はいカップ、お返しします! ごちそうさま!」
慌ててカフェモカを飲み干したジュニアが、空になった二つのカップをカウンターに返す。
そして、性懲りも無くイヴに絡もうとしていたマンチカン伯爵の首根っこを掴んで帰宅を促した。
んにゃあ……と鳴いて孫に引っ張られていく相手を、イヴは慌てて呼び止める。