辞書には載ってない君のこと

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「中村くんっている?」

辞書を持って来た。今度はちゃんと名前を聞いたから、迷わず返せる。

でも永華はいなくて、違う子に頼んだ。

「あっちゃーん!あっちゃん、呼んでるよー!」

ちょうど廊下側にいた女の子に頼んだけど、あたかも普通に呼んでいた。


みんなそう呼ぶんだ、あっちゃん。


「あー、いろは!」

今度は呼び捨てになってる…!

なぜかビクゥッと肩が揺れた。

たった1時間授業が終わっただけでそんな距離感って変わるの!?
こっちはただ借りてた辞書見てただけだよ!?

全然対応できてないんだけど… 

すぐに出て来てくれた中村くんは廊下の外まで来てくれた。

「これ…っ、ありがとう」

「いえいえ、どういたしましてっ」

急に呼び捨てされたことはもちろん、それよりも前から気になってて。

「あの…私名前言ったっけ?」

その瞬間、目の色を変えた。

右の口角を少し上げて、じぃっと私の顔を見る。

え…、何?どうかしたの…?

フッて息を漏らすように笑った。

「オレ透視能力持ってんの」
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