その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

13 救いの手1

ガタガタとスピードを上げて走る馬車の中に響くのは、ゼーゼーという私の荒い息遣いだけで、私を引き入れてそのまま抱き込んだロブダート卿は何を言わずに、ただただ私の背中を落ち着かせるようにゆっくりと撫でている。

どれほどそんな時間が経ったのだろうか、私の呼吸が落ち着いてきた頃になって、ようやく彼の腕の力が緩んで、私は顔を上げることができた。

座席に座る彼に横抱きにされた状態で、互いに視線を合わせる。彼の視線が私の頭のてっぺんからゆっくりと降りていきながら、次第に苦し気に歪められていくのが分かった。


「すまない俺のせいだ」


ぎゅうっと背中を包む彼の手に力が入り、私はゆっくりと首を振る。

「私が……グランドリーを激高させるようなことを言ってしまったのがいけないの」

私の言葉に、彼はわずかに目を細めて、そして何かを振り払うように視線を落とす。

「いや……俺のせいだ……アイツが俺を牽制しているのを理解していたのに、君に近づいてしまったから……」

悔やむように絞り出された声はわずかに震えているようだった。


ガタリと馬車が跳ねて、彼が一層強く私を抱き寄せた。

「っ!」

その衝撃で、ズキリとグランドリーに殴られた腹に痛みがはしった。

「どこか、痛むのか?」

そう聞かれて、わずかに笑って大丈夫だと伝える。
なぜだろうか、安心したせいか頭の中がぼんやりとしてくる。

チカチカと目の前に細かい光が点滅するように光って……そこで私の意識は途切れた。
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