その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

15 救いの手3

鎮静剤のせいか、すぐに私は眠りについた。

彼が何時まで私のそばに居たくれたのかは分からないが、私が眠りにつくまで彼は私の手を握っていてくれた。
その手がとても大きくて、暖かくて、同じような若い男の手で痛めつけられた後という状況にも関わらず、なぜだかとても安心したのだ。

そうして目が覚めたら、すでに日は高くのぼっていて、随分と寝込んでしまっていたことに驚いた。


起き上がってみれば、体のあちらこちらに痛みは感じるものの、さほど大きな怪我にはなっていないようだった。
メイド達に手伝ってもらいながら入浴して、簡単に身だしなみを整えてもらうと、父がやってきた。

私の腫れた頬と赤黒くなってる首の皮下出血を見た父は、辛そうに眉を寄せながら、ベッドサイドに腰かけた。

「まさか、お前がこんな目に合うなんて……今まで気づいてやれなくてすまなかった」

そう言って私の頬に手を添えた父は詫びるように目を伏せた。

「いえ……私がわざわざ隠していたのですもの。こんな大事になるまで黙っていてごめんなさい」

慌てて首を振る私に、父は「いや」と厳しい表情で顔を上げた。

「お前は、私達や弟妹の事を考えて言えなかったのだろう。無理もない。私たちがお前の結婚に頼りすぎていたのがいけなかった。もうこれ以上お前は何も心配しなくていい……先方のスペンス侯爵には、正式に抗議文を送ることにするよ」

父のその言葉に私は目を見開く。
だってそんな事をしたら……

そんな私の言いたい事は父には分かっていて。大丈夫だよと肩を竦められた。

「お前はしばらくここにいなさい。うちには朝から、あの男がやってきてお前に会わせろと騒いでいる。あんな場所ではゆっくりもできないだろうからね」

そう言って、父は私の頭をポンポンと撫でて立ち上がった。
きっとこの件について、色々やらねばならないのだろう。

父の姿を見送って、私はほっと息を吐く。

あの臆病な父があれほど強気でいるのだ。おそらく心強い味方がおり、何か有益な策があるのだろう。

きっとそれを整えてくれて、力を貸してくれたのはロブダート卿だろう。
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