その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

23 ずるい男【ラッセル時点】

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くたりと力なく眠りに落ちた妻を、ギュッと抱きしめた。
その身体は未だに先ほどまでの行為の熱を残して熱く、紅潮した肌がとてもつもなく艶かしい。

まだ彼女が欲しいと主張する自身の昂りを押さえながら、ゆっくりと呼吸を整えて、彼女を寝台に横たえる。

なるべく辛くないようにしたつもりだが、おそらく痛みが強かったであろう彼女は、終始目尻に涙を浮かべて、耐えていた。

大丈夫かと聞けば、気丈に「大丈夫ですから」と言って先を促した彼女。
どこまでも優等生であろうとするその姿は痛々しかった。


もっと、痛いから嫌だと言って甘えてもいいのに……そうしたらもっと甘やかせたのに。

そんな事を思いながら、自分のそんなわがままな考えに苦笑する。

甘えられるような関係でない結婚を提案してまで彼女を手に入れたのは自分のくせに。

彼女の中で自分はあくまでもビジネスパートナーで、この行為もそのために必要な事とと彼女が判断してくれたからである。

それにつけ込んだ俺は卑怯な男だ。

もともと契約の話をする時に、夫婦の営みについて触れなかったのは意図的で、ここで下手に言質をとってしまったら彼女にずっと触れる事ができないかもしれないと懸念したからだ。

契約という言葉が、想定外に彼女に安心感をもたらしているらしい。


それが、好都合なのか不都合なのか……。

大きく息を吐いて、彼女の髪をさらりと撫でる。


今夜は焦がれた人を妻にできた高揚感で寝られそうにない。
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