その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜
31 【??視点】
「ねぇご覧になった? ロブダート侯爵夫妻!」
「見た! 美男美女でなんだかお似合いよねぇ」
「お二人とも見つめ合っている姿なんて、すごくお互いを想ってるってお顔をされてて、あのロブダート卿のあんなお優しい表情なんて初めて見るわ!」
「確かに、いつもきりっとされて表情を崩すことなんてないし、言い寄るご令嬢達を寄せ付けかったのに、あんなお優しいお顔もなさるのね」
「なんだかすごく奥様を好き! って顔されてるわよね」
「あら、そりゃぁだって略奪ですもの~」
「なぁにそれ?」
「あら知らないの? ティアナ様ってスペンス侯爵家の嫡男のグランドリー様と婚約されてたじゃない? それをロブダート卿がティアナ様に声をかけて心移りさせて、侯爵家のお力を使って暴力行為を捏造して婚約破棄に持って行ったって聞いたわ」
「まぁ、あなた! そんな話を信じてるの?」
「あら! 私は確かにそう聞いたわ!」
「単なるゴシップ誌の妄想でしょう? そんな事で王命が下るわけないじゃない」
「私が聞いたのは、ロブダート卿がティアナ様にお声をかけたのも王太子殿下の命で、王宮をお尋ねになって帰られるティアナ様を、お見送りするためだったみたいよ? その姿を誰かが勘違いしてグランドリー様に伝えたみたいね。ロブダート卿とグランドリー様は昔から仲が悪いことで有名だったし、それでグランドリー様が大層お怒りになったらしいわ。実際にそんな事実があったのかって確認を取られたらしいわよ」
「え? 王宮に?」
「殿下の側近のどなたかに聞いたのではないかしら。あまりのそのご様子を知った王太子殿下がティアナ嬢の様子を探らせたら、どうやらお手に不自然な痣があったらしくて……」
「まぁ、それが例の?」
「違うのよ……その痣を見とがめたのが、ロブダート卿だったのよ。それでロブダート卿と殿下の側近の方が、夜会の後二人の乗る馬車を付けたのよ。そうしたら、殴られてお怪我をされたティアナ様が馬車から逃げ出してきたのですって」
「馬車の中で⁉︎」
「怖いわぁ」
「そこをロブダート卿がお助けになって、ご自宅にかくまったの。殿下の側近の方の中で一番位が高いのはロブダート卿でしょう? 流石に同じ侯爵家といえど、グランドリー様が乗り込むわけにもいかないから……そうして守り守られる内にお二人にお気持ちが芽生えたそうよ」
「素敵ね」
「ロブダート卿の求婚にティアナ様は最初はご自身が婚約解消をしたばかりの身だからとご遠慮なさったみたい。でもロブダート卿は毎日求婚し続けたそうよ。それでようやく折れたのだとか」
「それでロブダート卿があんなお顔を」
「あら、でもそれはティアナ様も一緒だわ」
「どういうこと?」
「ティアナ様とグランドリー様の並ぶお姿を見ていて素敵なお二人とは思っていたけれど、どこか違和感があったのよね。でも今日はっきりわかったわ。ティアナ様が心から笑っていらっしゃらなかった気がするの! いつも、無難というかどこか作った笑み、でも今日は心から笑ってらした、ダンスの時なんてお互いに顔を寄せ合って視線を交わし合っておられたじゃない? きっとグランドリー様にはお気持ちは最初からなかったのだと思うわ、親の決めた婚約者だから、うまく取り繕っていただけなのよ。暴力を振るような方だものきっとずっとグランドリー様の本性を知りながら押し殺しておられたのよ」
「なるほど…そう考えれば、ティアナ様がお幸せそうで何よりだわ」
「本当に、よくお似合いよね」
・
・
・
「何がお似合いだ!」
何も知らないくせに噂話に花を咲かせる女どもに沸々と怒りが湧いて来る。
本当ならば出て行って、「俺ははめられたのだ! 裏切られたのは俺だ!」と叫びたい。
しかしここは王宮で、自分は今現在一部のお王族に睨まれているのだ。
事を大きくするわけにはいかない。
ここに来る前に、父からも散々念を押されたのだ。
感情的になるな、押さえろ。
全ては自分自身の短気が招いた事なのだからなおさらだ。
ぐっと息をつめて、唇を噛む。
そんな自分の視界に、彼女が思いがけず近い位置で映ってしまった。
「見た! 美男美女でなんだかお似合いよねぇ」
「お二人とも見つめ合っている姿なんて、すごくお互いを想ってるってお顔をされてて、あのロブダート卿のあんなお優しい表情なんて初めて見るわ!」
「確かに、いつもきりっとされて表情を崩すことなんてないし、言い寄るご令嬢達を寄せ付けかったのに、あんなお優しいお顔もなさるのね」
「なんだかすごく奥様を好き! って顔されてるわよね」
「あら、そりゃぁだって略奪ですもの~」
「なぁにそれ?」
「あら知らないの? ティアナ様ってスペンス侯爵家の嫡男のグランドリー様と婚約されてたじゃない? それをロブダート卿がティアナ様に声をかけて心移りさせて、侯爵家のお力を使って暴力行為を捏造して婚約破棄に持って行ったって聞いたわ」
「まぁ、あなた! そんな話を信じてるの?」
「あら! 私は確かにそう聞いたわ!」
「単なるゴシップ誌の妄想でしょう? そんな事で王命が下るわけないじゃない」
「私が聞いたのは、ロブダート卿がティアナ様にお声をかけたのも王太子殿下の命で、王宮をお尋ねになって帰られるティアナ様を、お見送りするためだったみたいよ? その姿を誰かが勘違いしてグランドリー様に伝えたみたいね。ロブダート卿とグランドリー様は昔から仲が悪いことで有名だったし、それでグランドリー様が大層お怒りになったらしいわ。実際にそんな事実があったのかって確認を取られたらしいわよ」
「え? 王宮に?」
「殿下の側近のどなたかに聞いたのではないかしら。あまりのそのご様子を知った王太子殿下がティアナ嬢の様子を探らせたら、どうやらお手に不自然な痣があったらしくて……」
「まぁ、それが例の?」
「違うのよ……その痣を見とがめたのが、ロブダート卿だったのよ。それでロブダート卿と殿下の側近の方が、夜会の後二人の乗る馬車を付けたのよ。そうしたら、殴られてお怪我をされたティアナ様が馬車から逃げ出してきたのですって」
「馬車の中で⁉︎」
「怖いわぁ」
「そこをロブダート卿がお助けになって、ご自宅にかくまったの。殿下の側近の方の中で一番位が高いのはロブダート卿でしょう? 流石に同じ侯爵家といえど、グランドリー様が乗り込むわけにもいかないから……そうして守り守られる内にお二人にお気持ちが芽生えたそうよ」
「素敵ね」
「ロブダート卿の求婚にティアナ様は最初はご自身が婚約解消をしたばかりの身だからとご遠慮なさったみたい。でもロブダート卿は毎日求婚し続けたそうよ。それでようやく折れたのだとか」
「それでロブダート卿があんなお顔を」
「あら、でもそれはティアナ様も一緒だわ」
「どういうこと?」
「ティアナ様とグランドリー様の並ぶお姿を見ていて素敵なお二人とは思っていたけれど、どこか違和感があったのよね。でも今日はっきりわかったわ。ティアナ様が心から笑っていらっしゃらなかった気がするの! いつも、無難というかどこか作った笑み、でも今日は心から笑ってらした、ダンスの時なんてお互いに顔を寄せ合って視線を交わし合っておられたじゃない? きっとグランドリー様にはお気持ちは最初からなかったのだと思うわ、親の決めた婚約者だから、うまく取り繕っていただけなのよ。暴力を振るような方だものきっとずっとグランドリー様の本性を知りながら押し殺しておられたのよ」
「なるほど…そう考えれば、ティアナ様がお幸せそうで何よりだわ」
「本当に、よくお似合いよね」
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「何がお似合いだ!」
何も知らないくせに噂話に花を咲かせる女どもに沸々と怒りが湧いて来る。
本当ならば出て行って、「俺ははめられたのだ! 裏切られたのは俺だ!」と叫びたい。
しかしここは王宮で、自分は今現在一部のお王族に睨まれているのだ。
事を大きくするわけにはいかない。
ここに来る前に、父からも散々念を押されたのだ。
感情的になるな、押さえろ。
全ては自分自身の短気が招いた事なのだからなおさらだ。
ぐっと息をつめて、唇を噛む。
そんな自分の視界に、彼女が思いがけず近い位置で映ってしまった。