まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 二人が顔を上げた時には、もう魔術師は姿を消していた。両親も顔を見合わせている。
 だが、魔術の能力に長けた者の中には、思いもよらない行動を取る者も多い。
 そのことをシルヴァリウス家の人間はよく知っていた。両親は彼女を深追いすることなく、魔術芸団の団長に、彼女への感謝の気持ちを重ねて告げるにとどめておいたようだ。

 翌日。
 魔術師ナビーシャの言葉にしたがって、テティウスを診断するために魔術師の塔の長が王宮を訪れた。

「あれ、おにいさん……?」

 訪れた魔術師の塔の長を見て、テティウスは思わず口からこぼした。
 魔術師の塔の長なんて、長年の間研鑽をつまなければなれないだろうに、どう見ても二十代だ。
 渋いワインレッドのローブを羽織った彼は、にっこりと微笑んだ。

「人ならざる者の血を引いておりますので。これでも、もう九十なのですよ、殿下」
「ふぇぇ」

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