完璧御曹司の溺愛



 ふー、ふー、と胸に手を当てて息をはいていた時、理央の背中に突如、ズシっと重みが走った。


「え!?」


 一瞬、悠斗が後ろから抱きしめてきたのかと思ったが、悠斗の腕の重みというよりも、体を全部を傾けられてるようなかなりの重さ。


 「悠斗?」と首だけで振り返ると、悠斗は理央の背中に頭をもたげたまま、全身を預けていた。


「ど、どうしたの?」


 悠斗はぐったりとして動かない。


 慌てて半身で振り返ると、力が抜けてしまったように理央の肩に顔を押し付けてくる。

 
 とっさに、理央が悠斗を抱きしめるような格好になってしまった。


 熱があるって悠斗のほうじゃない?と、理央は心配でたまらなくなる。


「ゆ、悠斗?一体どうしたの?ねぇ、悠斗?」と、肩を軽く揺すると、そのうち悠斗が少し動いた。



 そして「…理、央……ボケ」と、一言。




「えっ…」


 ぼ、ボケ…?


 理央は自分の耳を疑ってしまった。


 でも今、確かにボケって言った。


 悠斗は私をボケって言った。


 う、嘘…。


 悠斗も私を騙してたんじゃないよね?
          

 裕太みたいに、私をからかって嘲笑するんじゃないよね?


 悠斗にそんな事されたら、私はもう絶対に立ち直れないよ…。


 
 胸にナイフが容赦なく突き刺さったような気分になった。


 耳を塞いで、今すぐここから逃げ出したくなるような衝動にかられる。



「……ゆ、ゆ、うと…?」



 恐る恐る悠斗を呼ぶ声が、自分のものじゃないみたいに掠れていた。




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