身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 見るからに老朽化の目立つ家。加えて今朝出掛けた時と同様、雨戸は戸袋から三分の一出たところで止まったままだ。
 現に耀も湊も訝し気な顔をしている。

(あぁ、嵯峨家の前まで行ってもらうとか、もっと手前で降ろしてもらうとかすれば良かった。迂闊すぎる……)

「君は、ここに住んでいるのか?」

 耀が不審気な声でたずねてくる。そりゃそう言いたくなるだろう。

「そ、そうですね。前は嵯峨家で暮らしていたんですが今は祖母と暮らしていてですね――では、送っていただきありがとうございました! 失礼します」

 聞かれてもいない言い訳をして、頭を下げてから結乃はそそくさと車を降りた。


***


「結乃ちゃん、姉さんの代わりに見合いをしたって本当なのか?」
 
 昼休み、会社に近いコーヒーショップに呼び出された結乃は席に着くなり従兄に問い詰められた。

「巧巳くん聞いたんだ」

 目の前で顔を曇らせているのは嵯峨巧巳。
 結乃の二歳年上の彼は嵯峨家の長男で跡取り息子である。
 
 現場を学ぶため一年前から嵯峨建設の大阪支社に勤務しているので会うのは久しぶりだ。
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