婚約破棄されたら「血みどろ騎士」に求婚されました
愛しい人の骸の上、折り重なるようにして倒れ込んだローザリンデの姿を最後に、幕が下りる。
アニスは終盤の展開に少々呆気にとられつつ、観客と共に拍手を贈った。
「悲しいお話でしたが、役者も演奏も素敵でしたね」
「……」
「……ルディ様?」
ルディはビロード張りの座席に深く腰掛け、アニスの方に体を傾けて頬杖をついていた。そのどこか不満げな横顔を不思議に思っていれば、彼が流し目にこちらを見て微笑む。
「ん?」
「どうされましたか?」
「いや、実際に観て納得しただけだ」
ルディはそう答えると、おもむろに立ち上がってはアニスに手を差し出した。もう何度もエスコートをしてもらっているのに、未だに慣れる兆しがない。アニスは平静な表情を取り繕いつつ手を重ねたのだった。
観客でごった返す窮屈な通路を抜け、二人は劇場の外へと出た。最中、アニスが人混みに呑まれないようにするためか、彼女の腰はずっとルディの腕に引き寄せられていて、屋内の熱気とは別件で頬が火照ってしまった。
アニスがさりげなく扇子で頬を冷ましながら迎えの馬車に乗り込むと、ややあってルディが口を開く。
「先程の演劇、実はアニスや俺を重ねている者が多いらしい」
「へっ?」
「婚約者と結ばれなかった高貴な娘、そこに付け込む別の男……って構図が、最近の社交界を賑わせている男女のようだ、とな」
アニスはぽかんとしてしまったが、少ししてムッと眉を寄せる。
「……わたくしの家は没落しておりません」
「ははっ確かに! 何とも失礼な奴らだ。しかしまぁ──俺はあながち間違ってないだろう。あの王子と一緒で、婚約者のいる女性に心を奪われたにも関わらず、事が起きるまで何の行動もしてこなかった意気地無しなところが特に」
自身を省みるように苦笑したルディは、流れる夜の街並みに視線を投じた。彼の苦い面持ちを向かいから眺めていたアニスは、小さく首をかしげて尋ねる。
「ですが、それは……相手のことを考えた結果、では? 意気地無しだなんて……」
「そのつもりだったんだが、こうして客観的に見ると……もう少し強引でも良かっただろうにと思ってしまってな」
例えば、とルディは前置いた。
「……貴女が欲しくて堪らないと、想いの丈をぶつけてしまうとか」
アニスは終盤の展開に少々呆気にとられつつ、観客と共に拍手を贈った。
「悲しいお話でしたが、役者も演奏も素敵でしたね」
「……」
「……ルディ様?」
ルディはビロード張りの座席に深く腰掛け、アニスの方に体を傾けて頬杖をついていた。そのどこか不満げな横顔を不思議に思っていれば、彼が流し目にこちらを見て微笑む。
「ん?」
「どうされましたか?」
「いや、実際に観て納得しただけだ」
ルディはそう答えると、おもむろに立ち上がってはアニスに手を差し出した。もう何度もエスコートをしてもらっているのに、未だに慣れる兆しがない。アニスは平静な表情を取り繕いつつ手を重ねたのだった。
観客でごった返す窮屈な通路を抜け、二人は劇場の外へと出た。最中、アニスが人混みに呑まれないようにするためか、彼女の腰はずっとルディの腕に引き寄せられていて、屋内の熱気とは別件で頬が火照ってしまった。
アニスがさりげなく扇子で頬を冷ましながら迎えの馬車に乗り込むと、ややあってルディが口を開く。
「先程の演劇、実はアニスや俺を重ねている者が多いらしい」
「へっ?」
「婚約者と結ばれなかった高貴な娘、そこに付け込む別の男……って構図が、最近の社交界を賑わせている男女のようだ、とな」
アニスはぽかんとしてしまったが、少ししてムッと眉を寄せる。
「……わたくしの家は没落しておりません」
「ははっ確かに! 何とも失礼な奴らだ。しかしまぁ──俺はあながち間違ってないだろう。あの王子と一緒で、婚約者のいる女性に心を奪われたにも関わらず、事が起きるまで何の行動もしてこなかった意気地無しなところが特に」
自身を省みるように苦笑したルディは、流れる夜の街並みに視線を投じた。彼の苦い面持ちを向かいから眺めていたアニスは、小さく首をかしげて尋ねる。
「ですが、それは……相手のことを考えた結果、では? 意気地無しだなんて……」
「そのつもりだったんだが、こうして客観的に見ると……もう少し強引でも良かっただろうにと思ってしまってな」
例えば、とルディは前置いた。
「……貴女が欲しくて堪らないと、想いの丈をぶつけてしまうとか」