恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されているようです
「営業なのに人前が苦手なんて情けないですよね」

 小さく笑うと、岡島さんは真剣な表情で

「問題ないよ、適材適所だから。いつも吉平の企画力はすごいと思ってるし苦手なことは任せてくれたらいい。……今回も頼ってくれたらいいよ。チームとして助けてやれるから」

 ……どくん。心臓が音を立てる。適材適所。そうだ、それが一番いい。岡島さんはリーダーである前に優秀な営業マンなのだ。他の企業とのコンペでも勝てるのは、彼の営業スキルの力が大きい。
 私の新規事業案。他社アプリと差別化はできているものの、既に市場にあるアプリではある。他社に打ち勝つ魅力を伝えきることが私にできるのかな……。
 岡島さんを見上げると優しい目で微笑んでくれている。

 だけど……私の頭に響いたのは美山さんの言葉だった。
 
 『君は君のよさがある』

「ありがとうございます。……でももう少し自分で頑張ってみます。自分らしい方法や伝え方で頑張ってみようと思って……岡島さんに頼ってばかりの自分を卒業してみます」

 ぎこちなく笑顔を作ってみると、岡島さんは少しだけ目を見開いた。

「そうか。応援してるよ。何かあったら何でも言ってくれ」

 私の頭をぽんぽんと撫でる。岡島さんは褒める時、よくこういったスキンシップを取る。以前はそれが嬉しくて胸に温かいものがたまった。
 だけど……今日は身体が固まってなぜだかぞわりとする。

「じゃあ俺は帰る。また明日な」
 岡島さんは爽やかに手を振り、オフィスから出て行った。

「よし頑張ろう」
 岡島さんに自分でやると言ったのだ。しっかりしよう、私は小さく頬を叩くとパソコンに向かい合った。
< 14 / 43 >

この作品をシェア

pagetop