恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されているようです
「どこにいくんですか!?」
「君が言っただろ。営業は見た目も重要だって」
「営業に行くなら、ジャージ姿の美山さんよりスーツ姿のほうがいいって話で――」
「同じだろ。今日の自分の姿をしっかり鏡でみたか?」
その言葉に何も返せない。プレゼン練習や中身を詰めるのに必死で数日ほとんど眠れてもいない。ひどいくまを隠せてもいないし、いつもの地味なスーツのまま。
「企画は最高だ。自信を持て。自信を持てないのならはったりをかませ」
美山さんの声は低いけど、優しい。朝からずっと固まっていた身体が少しほどける。
「今必要なのは練習じゃない。自信を持つことだ。――Cホテルまで」
美山さんはタクシーの運転手にそう告げると、自分はタクシーに乗り込むことはなく手を振る。
「美山さんは?」
「俺もコンペに出るからな。なずなに構っている時間はないんだ。――よろしく頼む」
本当にいつだって強引で…優しい。先日食事をしたホテルまで運ばれていった。
「吉平様ですね、伺っております」
タクシーが到着しロータリーで迎えてくれたのは、先日のブティックのスタッフだった。彼女は私を店に連れていくといくつかのスーツを私の身体に合わせる。アイボリーや明るいベージュで一着持っていない色だ。
「私に似合わないと思います」
「吉平様は肌が大変白いので、お顔に色を乗せないと顔色が悪く見えてしまうのかもしれませんね。今日は私に任せてください」
彼女の言葉に従ってアイボリーのスーツに袖を通す。
普段選ばないような明るい色が顔に乗せられていき、きっちりとまとめていた髪の毛はふんわりと巻かれる。
「魔法みたいですね」
「ふふ、ありがとうございます。勇気と自信が出るおまじないを、と承っております」
あの美山さんがそんな可愛いおまじないをかけようとしてくれていたなんて……頬が緩む。
次に彼女は小さな包みを渡してくれた。促されて開けてみると一本のルージュだ。
「こちらもお渡しするように言われていました。口紅はどうしても落ちてしまいますから…不安になったら塗り直すと良いと仰っていました」
明るいコーラルのルージュを受け取る。
いつも下ばかり向いていた。だけど、大丈夫。自分の頑張りは自分が知っている。最後の勇気を美山さんが作ってくれたから。
今から叶えることは魔法のおかげじゃない。自分を信じよう。
「君が言っただろ。営業は見た目も重要だって」
「営業に行くなら、ジャージ姿の美山さんよりスーツ姿のほうがいいって話で――」
「同じだろ。今日の自分の姿をしっかり鏡でみたか?」
その言葉に何も返せない。プレゼン練習や中身を詰めるのに必死で数日ほとんど眠れてもいない。ひどいくまを隠せてもいないし、いつもの地味なスーツのまま。
「企画は最高だ。自信を持て。自信を持てないのならはったりをかませ」
美山さんの声は低いけど、優しい。朝からずっと固まっていた身体が少しほどける。
「今必要なのは練習じゃない。自信を持つことだ。――Cホテルまで」
美山さんはタクシーの運転手にそう告げると、自分はタクシーに乗り込むことはなく手を振る。
「美山さんは?」
「俺もコンペに出るからな。なずなに構っている時間はないんだ。――よろしく頼む」
本当にいつだって強引で…優しい。先日食事をしたホテルまで運ばれていった。
「吉平様ですね、伺っております」
タクシーが到着しロータリーで迎えてくれたのは、先日のブティックのスタッフだった。彼女は私を店に連れていくといくつかのスーツを私の身体に合わせる。アイボリーや明るいベージュで一着持っていない色だ。
「私に似合わないと思います」
「吉平様は肌が大変白いので、お顔に色を乗せないと顔色が悪く見えてしまうのかもしれませんね。今日は私に任せてください」
彼女の言葉に従ってアイボリーのスーツに袖を通す。
普段選ばないような明るい色が顔に乗せられていき、きっちりとまとめていた髪の毛はふんわりと巻かれる。
「魔法みたいですね」
「ふふ、ありがとうございます。勇気と自信が出るおまじないを、と承っております」
あの美山さんがそんな可愛いおまじないをかけようとしてくれていたなんて……頬が緩む。
次に彼女は小さな包みを渡してくれた。促されて開けてみると一本のルージュだ。
「こちらもお渡しするように言われていました。口紅はどうしても落ちてしまいますから…不安になったら塗り直すと良いと仰っていました」
明るいコーラルのルージュを受け取る。
いつも下ばかり向いていた。だけど、大丈夫。自分の頑張りは自分が知っている。最後の勇気を美山さんが作ってくれたから。
今から叶えることは魔法のおかげじゃない。自分を信じよう。