恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されているようです
 すべての発表が終わり、静かに結果を待っていた。あの後まわりからの視線を感じるけど気にしない。やるべきことはやった、それでいい。

「それでは結果を発表いたします」

 司会の声と同時に一人の男性が壇上に上がる。背が高く、堂々としている彼は――美山さんは客席を見渡してから口を開いた。

「ダイスエンジンの皆さん、はじめまして。代表の深山大也です」

 私から「え?」と腑抜けた声が出るが、それは皆そうだったらしい。今日一番のざわめきが広がっていく。
 混乱する社員をよそに、美山さん――いや深山社長は優雅に一礼すると

「どの企画も大変興味深いものでした。その中でも今すぐにでも取り掛かりたいと思ったのは、三番」

 心の準備をする間もなくコンペの優勝者が発表されていた。期待していただけに全身から力が抜けていく。

「すぐに事業部をつくり、彼の事業部長への就任をこの場で発表します」

 壇上に上がった彼に大きな拍手が送られる。悔しいけど確かにとても素晴らしい企画だった。私も心からの拍手を送る。

「他の案もどれも素晴らしく事業化に向けて検討はしたい。ただ三番以外は、企画のインパクトが弱かったり見通しが甘いものが多かった。しかしもったいない。そこで社員の案をさらにブラッシュアップして事業化を目指す部をつくろうと思う。わが社の新しい柱を作っていく部署だ。――次の発表をする。社員投票賞だ」

 彼はそう言うと白い封筒を取り出した。
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