略奪☆エルダーボーイ
──翌日。
目が覚めると外が明るくなっていた。
時計を確認すると、いつも起きる時間よりだいぶ早く起きてしまったようだ。
通りでアラームが鳴らない訳だ。
二度寝をしても間に合う時間だけど全く眠くないため体を起こして学校へ行く支度をする。
鏡の前に立ち、髪にくしを通す。
いつも以上にはねまくっている髪を見てため息をついた。
今日、寝癖酷いな・・・ヘアアイロンかけなきゃダメかな。
まぁ、時間もあるしヘアアイロンかけよう。
引き出しからヘアアイロンを出して使えるようにセットする。
普段出かける時にしか使わないから使い勝手がいまだにわかってないけど。
ヘアアイロンが温まったのを確認してから髪を挟んではねまくった髪の毛を伸ばしていく。
髪全体にヘアアイロンをかけ、ストレートヘアーになった髪を見る。
いつも以上にサラサラになってるのを見て、これから毎日使おうかな、なんて考える。
その後、学校に持っていくものを準備して荷物を持って家を出る。
いつもなら黒瀬さんが玄関前で待ってるけど、今日は流石にいなかった。
いつも黒瀬さんが来る時間には早いし、あまり前だよね。
黒瀬さんに連絡を入れて先に行こうかな。
そう考えていた時、遠くでコソコソと電柱に隠れている人影が見えた。
まるで、私が通るのを待っているかのように。
「・・・・・・」
流石に誰かが待ち伏せしているかもしれない状況下で突っ切れるほど私に度胸は無い。
黒瀬さんが来るまで待ってようかな。
そう思いスマホで黒瀬さんに連絡しようとして視線を逸らした時、遠くにいた人影が動き出したのを視界の端で捉えた。
・・・嘘でしょ・・・。
さすがに怖くなって家の中に入ろうとしたけど、家の中に入って来る可能性がある。
両親も仕事に出かけたし、私1人だから家の中に入られたらどうすることも出来ない。
そう考えた私は、2軒先の黒瀬さんの住んでるアパートの前まで歩く。
後ろを確認すると、遠くにいた人も私を追いかけるように着いてきていた。
そのことに気がついた私は恐怖のあまり黒瀬さんに電話をかけた。
『“伊吹ちゃん?どうしたの?”』
呼出音のあとに聞こえてくる黒瀬さんの声・・・。
後ろの人のことを警戒しながらアパートの前で立ち止まった。
「い、いえ・・・あとどのぐらいで準備終わるのかなーって思って・・・」
『“え?もう少しかかるけど・・・どうかしたの?”』
「あの・・・」
恐怖心で声が震えそうになるのを何とか誤魔化しながら、なんて答えるか迷う。
正直に言って困らせたくないし、だからといって近付いてくる人影が怖いし・・・。
色んなことを悶々と考えている時、隠れていた人影が私の方へと近付いてくる。
「っ・・・!!」
『“・・・伊吹ちゃん?”』
「あのっ・・・なんでもないです!」
そう言ってブツッと電話を切り、スマホをポケットの中にしまう。
なんで言わなかったんだろ・・・私のバカ!
チラッと人影があった方を見ると、さっきよりかなり近い位置にいるのがわかった。
・・・怖い・・・!
視線を逸らしてアパートを見上げる。
その最中も、コツコツと私に歩み寄ってくる足音が聞こえてくる。
間近に迫ってくる足音に目を閉じて手をギュッと握りしめて押し寄せる恐怖に耐える。
助けて・・・!
「伊吹ちゃん!」
黒瀬さんの声が聞こえてきて目を開けると、アパートの出口から駆け寄ってくる黒瀬さんの姿があった。
チラッと人影があった方を見ると、舌打ちをして私とは反対方向に歩き出している。
「・・・電話来た時、伊吹ちゃんの様子おかしいと思ったんだ。怖かったね、もう大丈夫だよ」
何があったのかを察したのか、黒瀬さんは私のことを正面から優しく包み込むように抱きしめてポンポンと頭を撫でる。
フワッと香ってくる黒瀬さんの匂いと温もりに緊張が解けていく。
黒瀬さんの匂い、落ち着くな。
「すみません・・・」
「ううん、いいよ。気にしないで」
私が落ち着くまでそのままでいてくれる黒瀬さん。
その優しさに甘えるように私は黒瀬さんの腕の中で深呼吸を繰り返す。
早めに出たはずなのに、学校に着いたのは遅刻ギリギリだった。