召喚聖女は話が早い
「思い付いたというより、気付いたら指示を出していました。俺の方が驚きましたよ。思ってもみないことをやってしまったのは、あなたの影響でしょうか」

 オルセイが楽しげに言いながら、姿見の前に立った私の斜め後ろに立つ。そして彼は、持ってきた青いドレスを私の身に当てた。器用に、大粒のルチルクォーツが使われたネックレスも同時に当てられる。
 ドレスもネックレスも上品な感じで、私好みのデザインだ。オルセイが選んだこれで構わないどころか、これがあの膨大な選択肢の正解だと思える。

「オルセイがこれにした決め手は何でしょう?」

 私は後学のために、選択肢を絞るヒントを鏡の中の彼に尋ねてみた。
 すると彼もまた、鏡越しに私に微笑んでくる。

「今日のパーティーは、帰還した騎士団を労う――という名目の、あなたの結婚相手を決める集まりです」
「…………はい?」

 マナーなりしきたりなりを語られるかと思いきや、思いも寄らない情報を伝えられ、つい素で返してしまう。
 結婚相手? 私の? 何でいきなりそんなことに。
 突然のことに混乱し、私は反射的に鏡越しではないオルセイを見上げた。

「なので決め手は、貴女へのアプローチですね。――俺にしませんか? サキ」
「え……」

 だのに、その彼がさらにトンデモ発言を繰り出してきた。
 けれど向かい合った本物のオルセイに、はたとあることに気付き、その衝撃で却って冷静になってしまった。

「……こういったことは前例がないはずなのに、迷わず言うんですね」

 思わず、つっと視線を彼から逸らす。その直前に見えていたのは、青いドレスと黄色の宝石が付いたネックレスを手にした、青い髪をした琥珀色の瞳のオルセイ。

(面と向かってアプローチって……それにその後の台詞って……)

 今、私はプシュウと顔から火が出そうなほど、赤面していると思う。急激に冷静になって、()き止められた血が反動で勢いよく身体の隅々まで巡り出した感覚がする。

「どの世界線上にいる俺でも、あなたを得る結果を選びます。だったら、迷いようがないでしょう」

 それなのに、ここに来て私が彼に言った言葉を持ち出してくるのだから……彼を見ないわけにも行かない。
 私はもう一度、オルセイに目を戻した。
 そしてそこにあった彼の表情に、私だけの「決め手」を見つけた。今の私を鏡に映したような赤い顔がそこにあった――そのことが自分の半身に思えた。そんな、決め手が。

「オルセイ」

 私は大きく両手を広げ、オルセイを彼とよく似たドレスごと抱き締めた。

「素敵なアプローチですね。あなたに決めました」


 -END-
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