しょっぱい後には甘いもの。
「残す?食っていい?」
「いいけど、口つけてるよ?」
「昔食ってた飴玉交換した仲で今更過ぎないか?」
全然覚えていない。
何そのバカップルランキング上位な行為。私孝則の食べてたフリスクとか食べる自信無いんだけど!
「俺シャワー行くけど一緒に入る?」
「入るわけないでしょ、異性と風呂とか一度も無いから。」
「ふーん。」
そう言いながら脱衣所に向かったにゃんにゃんが、遠くでめっちゃ綺麗になってる!と叫んでる声が聞こえる。
独り言?にしては大きな声。
駄目だ、家主が帰ってきた所で全然気持ちが上がらない。
にゃんにゃんがお風呂から上がってきたら今日もまた、まんが喫茶に戻るかなと近場のまんが喫茶をスマホで調べる。
あとで不動産のことも聞いておかなきゃ…。
パンッと頬を叩いて気合いを入れてみるが、自分で自分の頬を叩くのはどうやら加減しまくりで痛みも気合いも何も上がってこない。
時間は22時になろうとしている。
ねぇ孝則、そろそろ寝る準備かな?
私と別れたこと清々してる?
それとももう、新しい彼女と一緒に寝てる?
もう私のこと…
孝則の世界から消えてる?
「上がったぞー。」
「あ、はーい…って!!パン一かい!!着てきなさいよ!部屋着!さっき着てたでしょ!」
「あちぃの。」
肩にバスタオルを乗せてまだ少し、足元が濡れてるくせにずかずかとリビングのソファーに戻ってくる。
ジムでも行ってるかのような30歳を過ぎても引き締まった身体。
ボディーソープか、シャンプーか、良い匂いがふわりと香る。
「濡れてるってー。ドライヤーは?」
「洗面所。面倒くさい。」
「もうっ!!!」
洗面所からドライヤーを持ってきて、今日の掃除で壁のコンセントを把握した私はにゃんにゃんにドライヤーをかけてあげる。
「あードライヤー人にかけてもらうとか美容室以外ないわぁ。」
「にゃんにゃん、私そろそろまたまんが喫茶に戻るね。」
「…………。」
返事がない。
ドライヤーの風の音で聞こえなかったのかな?と、わしゃわしゃと彼の短い髪の毛を乾かしていく。
「はい、終わり。」
「美穂は?シャワー使えば?」
「え、いいよ。向こうにもシャワーついてるし。」
「聞こえない。」
そう言ったにゃんにゃんは、サラサラになってドライヤーの熱風で熱くなった黒髪を、私の顔に近づける。
「…にゃんにゃん?」
「…それ、呼び名?それとも例の合言葉?」