処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
(……ってことは)
「わ、私、処刑ですか?」

 恐怖で声が震えてしまう。

「は? 処刑? なにを言っているんだ、お前は」
「だって、王家の血筋はみんな処刑したんですよね。生き残っていたら禍根が残るとかどうとか……いろいろあるんでしょう?」

 もはや涙目のアメリに、ルークが焦る。

「あの時の粛清は、国を壊滅に追いやった者への処罰であって、お前は関係ないだろう? ほとんどメイド長に育てられたんだろうが」
「でも……」
「殺されると思って、話さなかったのか?」

 そればかりが理由ではない。正直、巫女姫の娘として祭り上げられるなんてまっぴらだったからだ。
 けれど、今は頷いておく。
 すると、次の瞬間、ルークに引っ張られ彼の胸に顔を押し付けることになった。

「なっ……」
「大丈夫だ。殺したりしない。……生きていてくれてよかった」

 最後の言葉には実感がこもっていて、アメリの動揺も、少し落ち着いてきた。
 ルークは、「よしよし」と言いながら頭を撫で始める。

(……これは、もしかして宥められてる……?)

 完全に子ども扱いされているようだ。
 アメリは自分ばかりがドキドキしていることが、無性に悔しくなってきた。

《アメリを離してよ、困っているじゃないか》

 アメリの苛立ちを、フローは正確に把握してくれたようで、ルークの目の前を飛び回って抗議してくれている。
 ルークの手の力が抜け、ふたりの間に隙間ができると、フローはそこに入ってくる。

「なにか言いたげだな。アメリ、お前はフローの声が聞こえるのか?」
「ええ。今は、……離れろって言ってますね」
「え?」

 ルークは、反射的にアメリから手を離す。
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