処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
「ちょ……なんてことするんですかぁ! 誤解されましたよ……!」

 よりによって恋愛脳のジャイルズ伯爵に見られたのだ。どんな妄想をされているかわかったものではない。

「……ロバートのことは放っておけ。べつに誤解されても困らない」
「私が困りますよ!」

 アメリが怒鳴ると、さすがにルークもバツが悪い顔をした。

「悪かった。……でも、落ち着いて話を聞かせてほしい」
「……わかりました」

 アメリは観念してすべてを話した。
 子供の頃から、塔の地下に閉じ込められて暮らしてきたこと。
 マーサの計らいで、アメリだけは孤児として外に出ることを許されたこと。
 その当時は、母親が巫女姫だなんて知らず、フローのこともただのパペットだと思っていたこと。

「フローの声を初めて聴いたのは、レッドメイン軍が城に押し寄せた時です。すごく弱っていて、だけど私から力をもらったら動けるようになったと言っていました」
「力をもらう? 精霊が?」
「はい。私もよくわからないんですけど、フローは力が足りなくなると、私の力を吸収してしのいでいるらしいんですよ」
「お前の力ってなんだ?」
「さあ」

 矢継ぎ早に質問されても、アメリもわからないことだらけなのだ。

《……ルークは僕が光として見えているんだよね?》
「そう言っていたわよ」
《じゃあもしかして……》

 フローはルークに近づいていく。

《アメリ、ルークに僕を乗せてって頼んでよ》
「え?……うん。ルーク様、こうして願ってください。どうかフローが元気になりますようにと」

 手をお椀のようにして見せる。ルークは言われた通りの手の形をし、フローがそこに乗った。
アメリが蓋をするように手を合わせ、祈ったその時──ごっそり力を抜かれた感覚がした。

「きゃっ」

 フローが発する光が、ひときわ強くなった。視界が奪われ、ぎゅっと目をつぶったアメリは、再び開けたとき、そこに精霊の姿を見た。

「……ええ?」

手のひらくらいの大きさの、羽の生えた少年。銀色の髪はふわふわで、薄いブルーの瞳が綺麗だ。
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