処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
《どうしたんだよ、動きが変だぞ》
「いたた……普段使わない筋肉を使ったからよ。フローはどう? 元気になった?」
《うん。だいぶいい。まあ、根本的解決にはならないけど》

 パペットに入っているだけで、それ以上の力の流出は防げるらしい。
 話す元気が出てきたようなので、アメリもほっとした。

「それより、聞いてよ。ルーク様ったらひどいんだよ」

 アメリはフローに、ダンスをしなくてはならなくなった経緯を説明した。フローはひと通り聞いたのち、パペットの手を組んで考え込む仕草をする。

《ルークって、アメリのことが好きなのかな?》

 突拍子もないことを言われて、アメリは顔が熱くなる。

「まさか! そんなことあるはずないじゃない」
《だって構いすぎじゃないか? メイドを夜会のパートナーに選ぶのも無理があるだろ》
「それは、ルーク様が女嫌いで。他の令嬢だと角が立つからで……」

 そのはずだ……とは思うけど。アメリと接する彼からは、女嫌いという感じは受けない。

(あれかな。メイドは女枠に入らないのかな。だから私にいろいろ頼むのかしら)

 それはそれで、なんだか嫌な気持ちになる。

《アメリもまんざらでもないんじゃないの?》
「なっ、そんなことないわ。ルーク様は雲の上の人すぎてないってば!」

 むきになって反論する。そりゃ、ルークは思ったより話しやすいし、君主としても尊敬しているし、好きか嫌いか聞かれれば好きだけれど。恋愛対象として見ること自体が恐れ多いのだ。

「メ、メイドにかまっている場合じゃないじゃない。ルーク様が早くお嫁さんをもらえばいいんだよ! 誰か素敵なご令嬢、いないのかな」
《家柄が合って、年齢も合う令嬢は限られているんじゃないか? ルークと年齢の釣り合う女性なら、すでに結婚している人は多いだろうし》

< 99 / 161 >

この作品をシェア

pagetop