純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。



「ごめん、花暖。婚約を破棄したいんだ」

「……え? どういうこと?」

「彼女が好きなんだ。彼女は、市川美里さん。イチカワ化粧品の正真正銘の社長令嬢だ。旧華族の愛人の娘と違うんだよ」


 それは、付き合ってすぐに告げた私の生い立ちの話。確かに私は、旧華族家の当主と使用人の間に生まれた愛人の子……それは変わらない事実。

 結局は、お金が目的だったのだと思い私は婚約破棄を受け入れた。


「分かりました……今までありがとうございました」


 そう言って私は婚約指輪を外して彼に返して彼との思い出ばかりがあるカフェを後にした。それは――プロポーズされて一ヵ月後のことだった。





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