不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 エムリーの顔は、ぐしゃりと歪んでいた。
 怒りと欲望を孕んだその表情に、私は少し後退ってしまう。
 妹の中に大きな欲望が渦巻いているのは知っていたつもりだが、ここまでとは予想外である。彼女は私が思っていた以上に、とんでもない人なのかもしれない。

「……まあ、今回の件に関して、あなたに非があるという訳ではないわ。また次の婚約者をお父様やお母様が探すでしょう」
「……」
「それまで大人しくしていることね」
「ええ、もちろんです」

 私の言葉に対して、エムリーは鋭い視線を向けてきた。
 それは明らかに、大人しくするつもりがない視線だ。どうやら私のささやかな平穏は、崩れ去ってしまったようである。
 これから妹が何をしてくるかはわからない。何があってもいいように、私も備えておく必要があるだろう。
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