不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
「んんっ……」
「エムリー、気が付いたの?」
「あ、あれ?」

 そんなことを考えていると、エムリーが目を覚ました。
 色々と不安な状況ではあるが意識が戻ったというのは、嬉しいことだ。

「エムリー、驚かないで聞いてね。外に熊がいるの。それで馬が動揺して馬車が揺れたと思うのだけれど……とにかく、今は静かにしていて」
「エムリー? それは、誰ですか?」
「え?」

 焦りながら事情を説明した私に対して、エムリーはきょとんとした顔をしていた。
 そして彼女は、自分が誰であるかを聞いてきている。その事実に、私は固まっていた。

「というか、ここはどこで私は誰で……あれ?」
「ま、まさか……」

 エムリーは周囲を見渡して、疑問符を浮かべていた。
 それによって、私は悟る。彼女が記憶喪失になったということを。
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