不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 結局馬車は、無事に最寄りの町まで辿り着いていた。
 熊は馬車に興味を持たず、すぐに離れて行ったのである。
 それからは御者から、平謝りされた。とはいえ、今回彼に罪があるという訳ではない。あんな所に熊がいることなんて、予想外だっただろうし。

「あの、それでどうなんですか? エムリーは……」
「これは、記憶喪失ですね。私も専門ではないので、詳しいことは言えませんが……」
「やはり、そういうことなのですね」

 最寄りの町は、それ程大きな町ではない。そのため、診療所程度しかなかった。
 とはいえ、この町医者の診断は急な貴族の患者にも、特に動揺せずに対応してくれた。恐らく場数を踏んでいるのだろう。その診断は、信頼できそうだ。

「念のため、大きな病院などで診てもらった方がいいですね。ただ、外傷や脳に異常なども見つかりませんでしたから、その点はご安心ください」
「あ、ありがとうございます」
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