帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める
2.唯一の伴侶
【なんとしてでも離縁してくるのだ!】

 翌日、朝早くに届いた父からの手紙には書き殴ったような文字が一文だけ書かれていた。
 住み込みの書生に頼むことなくこのような手紙を出すなど、よほどお怒りのようだ。
 帝都の守護鬼・朱縁の屋敷の一室に用意された自室にて、琴子は大きくため息を吐きながら天を仰ぐ。
 なんとしてでも離縁してこいと言うが、なんとか出来るのだろうか?
 思わず眉を八の字にした琴子は、手紙に目を戻しながら昨日の出来事を思い出した。

 ***

 離縁しないと告げた朱縁は、すぐにメイドを呼びつけた。

利津(りつ)、利津はいるか?」
「はい、ここに」

 中廊下にて待機していたのだろうか。
 琴子を案内したメイド姿の女中がすぐに返事をし襖を開けた。

「伴侶が見つかった。【離縁の儀】は中止だ」
「まあ」

 落ち着いた雰囲気のメイド――利津だったが、朱縁の言葉には喜色を帯びた驚きの声を上げる。
 黒い目がキラキラと輝き、主人より喜んでいるように見えた。

「おめでとうございます。心より、お喜び申し上げます」

 座したまま深々と礼を取る利津に、朱縁もしみじみとした笑みを浮かべ「ああ」と頷く。
 そしてすぐに利津へと命じた。
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