帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める
「見届け人の身内には儀式中止の旨と今までの大儀へのねぎらいを。必要ならば褒美も与えると告げ、今日のところは帰って貰え」
「はい」
「は……え? な、なにを」

 想定外のことに固まってしまっていた琴子は、目を瞬かせながらも声を上げる。
 驚き固まっているうちに何やら色々と決められてしまっていた。
 まずはどういうことなのか説明が欲しい。
 だが、なにやら盛り上がっている主人とメイドは琴子の戸惑いを他所に次々とことを進めていった。

「そうだ、確か琴子の婚約者も迎えに来るのだったな。婚約は解消せよと伝えて追い返せ。琴子はやらぬ」
「はい!」
「え? ええ!? 困ります!」

 嫁ぎ先の迎えまで追い返せという言葉に流石に抗議の声を上げた。
 だが、抗議する琴子を見た朱縁は不思議そうな顔をする。

「何故だ? 琴子は私の花嫁だ。唯一の伴侶と分かったからには離縁する必要もない」
「いえ、ですが……」

 唯一の伴侶というのが何なのか分からないが、確かに離縁しないのならば新たな婚約者など不要だろう。
 理屈は通っていたので少々押し黙ってしまう。

(いえ、でも長年鬼花は離縁して婚約者の元に嫁いで行ったのではないの? 私だけ違うということ?)

 長い年月繰り返されてきた儀式が破綻してしまい、どうすれば良いのか分からない。
 困惑する琴子に朱縁は柔らかに笑う。
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