帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める
「そうとなればその縁起の悪い着物も早く脱いで貰わねば。いつから着るようになったかは覚えていないが、縁を切り新たな縁を見つけるという意味があるのだろう? 縁を切られてはたまらない」

 そう言い、琴子の右手を掴んでいた手が襟元へと移る。
 もう片方の手が帯の方に向かい、朱縁のはだけた胸元が近付き悲鳴を上げそうになった。
 殿方の側にすらいられなかった琴子には刺激が強すぎる。

(ち、近すぎる! しかもまさか、今ここで脱げというの?)

 帯に手をかけようとする朱縁をどうすれば良いのか分からない。
 このまま脱がされることだけは遠慮したいが、突き飛ばしても良いのだろうか?
 様々な意味で早くなる鼓動に息苦しさを覚えながら、琴子はどう対処すべきか考えていた。
 そこに、利津のコホンという咳払いが届く。

「朱縁様、落ち着いて下さいませ。いきなり状況が変わったとなれば琴子様も戸惑ってしまわれます。初夜はお時間を置いてからの方がよろしいのではないでしょうか?」
「は……」

(しょ、初夜ぁー!?)

 思わず心の中で悲鳴を上げた。
 考えてもいなかった言葉にとにかく驚く。
 確かに朱縁の行動は着物を脱がそうとしているようにも見えるが……。

(縁起が悪いから脱げということでしょう? 別にそのようなことをする意図は――)

「ああ、それもそうだな。少々浮かれすぎた」

 あるはずがない、と断じようとしたのに、朱縁は否定もせず頷き琴子から離れた。
 はじめて身近に感じた男の存在が離れホッとしたが、心の面ではまったく安堵出来ない事態に琴子の顔に熱が集まる。
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