激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。



「どうぞ、お入り下さい」


応接室に入り、扉を閉める。

すると部屋に入った途端、光莉さんは私を抱き締めた…。


「綾乃さん、申し訳ありませんでした…」
「…止めて下さい」


光莉さんの体を押し退け、数歩移動する。


「もう、止めて下さい。光莉さんとの婚約は破棄させて頂きますから」
「それを…なんとか…。婚約破棄したら…両親に合わせる顔が無い…」

…ほら。
結局、それ。


私の気持ちよりも、自分の体裁を整える方が先。


自分さえ良ければ良い。
そんな感情が駄々漏れの、どうしようもない人だ。


「1つだけ、確認させて下さい。光莉さんは、私のこと好きでしたか?」
「……………」



私の問い掛けに、光莉さんは黙り込んでしまった。



…そこ、黙り込むところじゃないんだけどね。





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