激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。


「…もう、良いです。お引き取り下さい」
「いや、待って…違うんだ…」
「もう良いから。言うことを聞かないなら警備員を呼びますよ」
「そ、んな…」


私の力強い言葉に、渋々歩いて応接室を後にする光莉さん。



結局………結局、自分のことばかり。




面子を保つ為の婚約者。
昔から好きな幼馴染。

地位、立場、声明、評価、名誉。



それら全てを如何に保つか。
そんなことしか、考えていないと思う。



…私のことを馬鹿にし過ぎだ。




東郷さんが言っていた「藤山家と鷹宮家は馬が合わない」という話が本当なら。


光莉さんは…本当にどうしようも無い人。



私は…私は
愛の無い、お互いの利益の為だけの結婚なんて……



絶対に願い下げだ……。




だけど、本音は。

例えそれが嘘でも。
私のことが好きだと、言って欲しかったな……なんてね…。



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