激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。



「和孝さん…本当にありがとうございました…」
「お礼を言われるほどのことではありませんよ」




和孝さんが1人で住んでいる大きな豪邸。


そこで今は半同棲のような感じで暮らしている。


元々住んでいたアパートから徐々に荷物を運び出しており、それが完了したら正式にここに住むのだ。




「綾乃さん…おいで」


帰宅しソファに座った東郷さん。
手招きで呼ばれた私は、膝の上に座らされる。


「【西野聖華】さん。長い間、お疲れ様でした」
「和孝さん……」


優しく唇を重ね、そっと抱き締めてくれた。


「これからは仕事で【西條綾乃】さん。それ以外は【東郷綾乃】さんです。【西野聖華】さんは…もう、任務終了です…」
「…そうですね」



【西野聖華】として過ごしてきた日々は、あまりにも長かった。
けれどそのお陰で、私は私らしく生きて来られたし、楽しい人生を送ることができた。


東郷さんと出会えたのも…【西野聖華】だったからじゃないかな。


そう、思いたい自分がいた。



「綾乃さん」
「はい…」


名前を呼ばれ、東郷さんの目を見る。


東郷さんはポケットから指輪を取り出し…そっと私の左薬指に嵌めた。

大きなダイヤモンドが輝く、素敵な指輪……。


「こちらは婚約指輪です。結婚指輪は、また一緒に選びに行きましょう」
「和孝さん、ありがとうございます…」



この指に嵌める、2個目の婚約指輪。

しかし、前の指輪とは比べ物にならないくらいの感動と喜びを覚える。




嬉しくて、愛おしくて。
今度は私から唇を重ねた。






愛されたいと願った、西條綾乃。

私は東郷和孝さんと出会い、心から愛される喜びを知った。





「綾乃さん、一生離しませんから。ずっと俺の傍に居て下さい」
「勿論です。ずっと…和孝さんの傍に……」





東郷さんはそっと私のお腹に手を当て、優しく撫でる。







いつまでも、東郷さんの隣で。

授かった大切な愛の証と共に…これからも…。

















激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。 終






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