激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。


「光莉さんもぉ…幼馴染がいるなら…婚約する前に言って欲しかったですよぉ…」
「そうだね」
「私だけが好きになってぇ…他の女が1番でぇ…私が…2番…? そんな話…有り得ないよぉ!!」
「そうだね、聖華ちゃん」


久しぶりの美味しいお酒に飲むペースも早まった。
しかも、悪酔いなんかして。考えうる限り、最悪だ。


「マスタ~…もう飲めません…。飲めません…」
「聖華ちゃん、2年前と変わらないね。自分を見失うまで飲んだら駄目だよ」
「そんなこと言わないで下さいよぉ…」



机に突っ伏して、恥ずかしい私。
そんなことを頭の片隅で思いつつも、もう体も頭も言うことを聞かない。


「うーん…和孝くん。もうすぐ上がりでしょ。聖華ちゃん、連れて帰ってあげてくれるかな」
「……分かりました」

そんな会話を聞いたのを最後に、その後の記憶はあやふやになった。








ただ…東郷さんに体を支えられ、どこかへ向かう中で…


「西條さんは、変わらないです…」


そんな言葉が……聞こえたような気がした。




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