エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 なんて完璧なフォロー!と、美月は心のなかでガッツポーズを作る。

(それに私の誕生日、よく覚えてたな)

 美月の誕生日が十一月というのは正しい情報だった。オムライスの件といい、晴馬の記憶力のよさには感服する。

「そうか。残念じゃが、それなら仕方ないな」

 善次郎も納得したようだ。晴馬は穏やかにほほ笑む。

「署名、本当にありがとう。そろそろ横浜まで送ろうか? あまり遅くなると疲れるだろう」
「そうじゃの~」

 善次郎は首をコキコキと鳴らしながら言う。

「今日はたしかに疲れたの。そうだ、今夜はここに泊まらせてもらってもいいか?」

 元気そうに見えても、善次郎は八十歳近い年齢だ。猛暑の日々も続いているし、あまり無理はさせられない。

「ぜひ、そうしてください。お部屋をご用意しますね」
「いやっ、それは」

 にこやかに返事をした美月とは対照的に、晴馬は焦った顔だ。けれど、美月にはその理由がわからない。

「ゲストルームがあるし、問題ないでしょう?」
「だが……」

 戸惑う彼に、善次郎が鋭い視線を向けた。それに気づいた美月は、コソッツと晴馬に耳打ちする。

「断るほうが不自然よ。ねっ」

 そして善次郎に向き直り、あらためて笑顔を見せる。

「部屋を整える間に、お風呂をどうぞ」
「ありがとう、美月さん。いい奥さんをもらえてよかったのぉ、晴馬」
< 101 / 180 >

この作品をシェア

pagetop